よみもの

一匙和草に込めた願い

2022.05.19

一匙和草をご覧いただきありがとうございます。

一匙和草は、国産和漢の魅力をもっと多くの方に知っていただき、使っていただきたいという想いで立ち上げた国産和漢原料だけを扱う量り売りプラットフォームです。

今回は一匙和草の立ち上げの背景についてご紹介させてください。

国産和漢植物の背景

国内で流通している和漢植物の8割を輸入に頼っているというのをご存知でしょうか?

今は自給率2割程度ですが、かつては日本の生薬栽培は盛んで様々な品目を輸出していたそうです。

例えばオタネニンジン。朝鮮半島から渡ってきた朝鮮人参は、徳川吉宗の命で幕府により栽培が奨励されるようになり、「将軍より賜った種」という意味でオタネニンジンと呼ばれるようになりました。

それまでは大変な貴重品だったオタネニンジンを、幕府と指導と農民の努力によって輸出できるほどの品質までに向上させ、かなりの量を輸出していたそうです。盛んな国産生薬の栽培状況は戦後も続き、1950年-1960年頃にピークを迎えます。

ところが、1972年の日中国交正常化以降、安価な中国産生薬が大量に輸入されるようになり、国産は競争力を失い急速に衰退してしまいます。現在のオタネニンジンの栽培戸数は当時の18分の1程度まで減少し、さらに、日本固有の品種であった生薬の種苗が持ち出されて中国で生産され逆輸入されるといったことも発生しているそうなのです。

日本では明治維新の際に漢方を医療と認めず、漢方が衰退してしまった歴史がありますが、1976年に医療用漢方製剤が保険適用されるようになり、日本国内での需要は急速に増加してきます。

ところが需要が増加したときにはもう、日本の生薬栽培は衰退していて中国産に頼らざるを得ない状況です。

別に安い中国産に頼っていればいいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、もはや中国産も安くはありません。中国国内でもニーズが高まっていたり、乱獲などで稀少になっているものがあったり…輸入価格は年々上昇しているのです。

このままでは持続可能な供給が難しくなってしまう。こういった経緯により、国産を増やしていこう!という声は10年ほど前からあるものの、なかなか進んでいない現状があります。

その背景として、薬価の問題があります。薬として販売する場合は販売価格が決まっているため、生産者によっては手間を掛けて栽培してもコストが見合わないということもあるのです。

私たちが国産だけを扱う理由

私は、私自身の体調不良をきっかけに和漢のセルフケアブランドMEGURIEを立ち上げ運営しています。自分が救われた漢方の考えが、もっと多くの人の暮らしの中で活かされたら…という想いがあります。

と同時に、なるべく国産の生薬を使用しながらお茶やスキンケアアイテムとして商品をつくることを心掛けてきました。

その理由として、トレーサビリティの観点からも国産であることは価値があること。薬以外の利用で国産生薬を消費することで、国産生薬の課題に少しでも取り組みたいと考えていること。

そして、国産生薬の生産量が増えて、使う人が増えて、消費され、循環していくことこそが、私たちの暮らしをもっと豊かにしてくれると信じているからです。

国産生薬の課題と向き合う中で、生産者や農学者、薬学者や漢方のお医者様などたくさんのご縁に恵まれ、MEGURIEでは少しづつ品質の担保された国産の生薬をお茶やスキンケアなどに配合できるようになりました。

この安心して使える原料をもっとたくさんの方に知って使ってほしい。

今回、一般社団法人日本薬用機能性植物推進機構様にたくさんのご協力をいただき、一匙和草のサービスとしてみなさんのお手元に国産の和漢原料をお届け出来ることになりました。

一匙和草が目指す世界

まだまだ稀少で価格面では中国産に負けてしまう部分もある国産ですが、もっとたくさんの人に国産生薬のことを知っていただき、使っていただき、応援していただけたら…。

小さな一歩ですが、サステナブルな和漢原料の循環に少しでも貢献したい。そして、量り売り感覚で気軽に取り入れていただける和漢食材を通してみなさんの健康と幸福のお役に立ちたい。

私たちは国産原料の魅力を発信することで生産者とみなさんを結ぶ懸け橋のような存在になれたらと考えています。

この記事を書いた人

株式会社ハピラボ代表取締役

瀬戸みゆき

和漢のセルフケアブランドMEGURIEと和漢原料の量り売りプラットフォーム一匙和草を運営しています。
漢方や和漢植物を通してウェルビーイングな人と社会づくりを目指しています。